休業手当を支払った時の算定・月変ってどうなるの?を整理してみた※2021/6/22更新

労務のしごと

新型コロナウイルスの影響で初めて休業手当を支払った

こんにちは。社労士試験合格者であり現役の労務ワーカーの11ぴきのぺんぎんです。

昨今の新型コロナウイルスの影響により、私の勤務する会社もこの4月に初めて休業となり、休業手当の計算・支払いをしました。

きっと、私のように初めて休業手当の支払いをする労務ワーカーのみなさんも多いのでは…と思い、

以前、平均賃金の計算方法を記事にしました。↓

そして、この6月に気になるのは、

「休業手当を支払ったけど、これって随時改定(月変)対象…?」

「休業手当を支払った場合、定時改定(算定)ってどうやるの…?」

ということです。

きっと、同じことを不安に思っている労務ワーカーのみなさんも多いのではないかな…と思っていたところ、

休業手当・雇用調整助成金概算計算サイトさんが、このようなツイートをしてくださいました。

「おおお…!とっても助かるまとめ…!」と、とても嬉しくなりました(^^)

そこで、今回私も、自分が作業をする前に、休業手当を支払ったときの随時改定(月変)と定時改定(算定)について整理してみようと思い、この記事を書くことにしました。

年金事務所に問い合わせするにしても、ある程度知識を整理しておくと、相手の回答をとらえやすくなるかもしれません。

では始めます!

随時改定(月変)と定時改定(算定)のおさらい

まず始めに、通常の随時改定(月変)と定時改定(算定)について、おさらいしてみたいと思います。

随時改定(月変)とは

まずは、随時改定(月変)です。

随時改定について、日本年金機構のホームページでは、このように書かれています。

・日本年金機構 随時改定の概要

被保険者の報酬が、昇(降)給等の固定的賃金の変動に伴って大幅に変わったときは、

定時決定を待たずに標準報酬月額を改定します。これを随時改定といいます。

随時改定は、次の3つの条件を全て満たす場合に行います。

(1)昇給又は降給等により固定的賃金に変動があった。

(2)変動月からの3か月間に支給された報酬(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた。

(3)3か月とも支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上である。

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo-kankei/hoshu/20150515-02.html

例えば、4月に昇給して給与月額が上がった場合、4.5.6月の3か月を平均して、

昇給前の標準報酬月額より2等級以上あがっていれば、

7月は随時改定になり、標準報酬月額を変更→健康保険料・厚生年金保険料が上がります。

随時改定をするときは「月額変更届」を提出するので、「月変(げっぺん)」という呼び方をしたりします(^^)

定時改定(算定)とは

次に、定時改定(算定)です。

定時改定について、日本年金機構のホームページでは、このように書かれています。

・日本年金機構 定時改定の概要

被保険者の実際の報酬と標準報酬月額との間に大きな差が生じないように、

事業主は、7月1日現在で使用している全被保険者の3か月間(4~6月)の報酬月額算定基礎届により届出し、

厚生労働大臣は、この届出内容に基づき毎年1回、標準報酬月額を決定し直します。

これを定時決定といいます。

決定し直された標準報酬月額は、9月から翌年8月までの各月に適用されます。

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo-kankei/hoshu/20121017.html

随時改定との違いは、定時改定は固定的賃金変動がなくても、7/1に在籍している全被保険者を対象として見直す点です。

たまに、「4月から6月までは残業すると健康保険料と厚生年金保険料が高くなるから残業しない!」…なんて話を聞きますが、

それは、残業代は固定的賃金ではないため、残業代だけがどんなに多くなっても、随時改定の対象にはならず

それだけで健康保険料と厚生年金保険料が上がることはないのです。

しかし、4~6月は別です。

4~6月は固定的賃金の変動がない人も、全員実際に支払われた給与の平均で保険料を見直す定時改定の対象月です。

つまりは、4~6月で残業代がたくさん支払われると、9月分からの健康保険料と厚生年金保険料が上がってしまうということなんですね。

(個人的には保険料を上げないために残業しない!っていうのはなかなか…(-_-;)と思っています)

随時改定は「月変」でしたが、定時改定は、「算定基礎届」を提出するので、「算定」と呼んだりします(^^)

では、次はいよいよ休業手当を支払った場合の随時改定、定時改定をみてみましょう。

休業手当の支払いがある=「一時帰休」した

一時帰休とは

「休業手当を支払った日=会社都合の休業をした」ということになりますが、それを「一時帰休」といいます。

一時帰休とは、不況等による影響により休業や操業短縮を余儀なくされた企業が、一時的に被保険者を休業させることです。

一時帰休が解消している状態とは

これから説明する休業手当を支払ったときの随時改定(月変)と定時改定(算定)は、

月変や算定をしようとする時に、「一時帰休が解消しているか否か」が大きなポイントとなります。

日本年金機構の事務取扱事例集では、このように説明されています。

一時帰休が解消している状態とは、

現に低額な休業手当の支払いが行われておらず、その後も低額な休業手当が支払われる見込みがない状態」をいう。

では、そんな前提を頭におきつつ、まずは休業したときの随時改定から整理してみます。

一時帰休したときの随時改定(月変)

ポイント①:休業手当の支払いが3か月連続か

まず、一時帰休に伴う随時改定は、低額な休業手当等の支払いが、継続して3か月を超える場合に行います。

つまりは、休業手当の支払いがある月が3が月を超えているかということがポイントとなります。

つまりは、4月だけ休業手当の支払いがある月があり、残りの2月は休業していなければ、7月月変の対象とはなりません。

ここでいう「休業手当の支払いがある月」というのは、1日でも休業手当を支払った月があれば、「休業手当を支払った月」に該当します。

「月」というのは暦日ではなく月単位となりますので、例えば4/15に休業したら、4.5.6月の報酬の平均を見ます。

ポイント②:3か月経過後に一時帰休が解消しているか

3か月連続で休業+4か月目も休業が解消していない…随時改定する

3か月休業が続き、4か月目についても、休業が解消されていない場合は、「低額な休業手当等の支払いが、継続して3か月を超える場合」に該当します

その場合、3か月の報酬を平均して2等級以上の差があり、3か月とも支払基礎日数が17日以上あれば、随時改定の対象となります。

なお、支払基礎日数には、休業手当が支払われた日も含まれます。

3か月連続で休業+4か月目は休業が解消した…随時改定しない

3か月休業が続いたけれども、4か月目に、休業が解消されている場合は、「低額な休業手当等の支払いが、継続して3か月を超える場合」に該当しないので、随時改定はしません。

休業手当は「固定的賃金の変動」に該当するの?

随時改定の「固定的賃金の変動」とは?

随時改定の必須条件として、「昇給又は降給等により固定的賃金に変動があった。」という項目があります。

さきほど紹介した、日本年金機構の随時改定のページに、固定的賃金の変動に該当するものの説明がありますので、一部を抜粋します。

・日本年金機構 随時改定 留意事項

固定的賃金とは、支給額や支給率が決まっているものをいいますが、その変動には、次のような場合が考えられます。

  • (ア)昇給(ベースアップ)、降給(ベースダウン)
  • (イ)給与体系の変更(日給から月給への変更等)
  • (ウ)日給や時間給の基礎単価(日当、単価)の変更
  • (エ)請負給、歩合給等の単価、歩合率の変更
  • (オ)住宅手当、役付手当等の固定的な手当の追加、支給額の変更

(2)休職による休職給を受けた場合は、固定的賃金の変動がある場合には該当しないため、随時改定の対象とはなりません。

(3)一時帰休のため継続して3か月を超えて通常の報酬よりも低額の休業手当等が支払われた場合は、固定的賃金の変動とみなし、随時改定の対象となります。
 また、一時帰休が解消され、継続して3か月を超えて通常の報酬が支払われるようになった場合も随時改定の対象となります。

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo-kankei/hoshu/20150515-02.html

でも、休業手当って、月によって支払う日数が違うこともあり、そのときは、月によって大幅に支給額が変わりますよね。

また、最初は平均賃金×100%で支給していたけど、途中から平均賃金×60%で支給することにしたなんてケースもあります。

では、それぞれのケースで、それが固定的賃金の変動となるか、確認してみます。

休業手当の支給割合が変わった月→固定的賃金変動あり

休業手当の支給割合が変わった月は、固定的賃金変動ありとされ、随時改定の対象となります。

さきほど話したケースのように、例えば、

・4月から6月までは平均賃金×100%で休業手当を支給した

・7月からは休業手当を平均賃金×60%で支給することにして、7月から9月まで休業手当を支給した。

とします。

このケースの場合、まず4月から6月までの報酬で随時改定、そして7月から9月までの報酬の平均が2等級以上差があった場合は、そこでまた随時改定をします。

休業手当の支給日数が変わった月→固定的賃金変動なし

では、休業手当の支給日数が変わったことで、賃金が増減した場合はどうでしょうか。

単に休業日数が変更となった場合は、随時改定の対象とはなりません。

つまり、支給割合が同じであれば、休業が解消されるまでは、休業手当の額が増減しても、随時改定は1度だけということですね。

休業が終わったときの随時改定

一時帰休が解消され、継続して3か月を超えて通常の報酬が支払われるようになった場合も随時改定の対象となります。

つまりは、元に戻ったときも、随時改定の対象となるのですね。

では次に、休業手当を支給したときの定時改定(算定)を整理してみます。

一時帰休したときの定時改定(算定)

ポイント:3か月経過後に一時帰休が解消しているか

休業手当を支払ったときの定時改定(算定)での一番大きなポイントは、7月1日時点で一時帰休が解消しているかということです。

つまりは、

・一時帰休が解消しているなら、通常の賃金で算定する

・解消していない場合は、休業手当加味した賃金で算定する

という、ざっくりしたイメージをつかんでいると話が分かりやすいです。

一時帰休が解消している場合

ではまず、一時帰休が解消している場合を整理します。

一時帰休した月と、していない月がある

7/1の時点で、一時帰休が解消している場合、休業していない月の賃金だけで算定します。

すべての月が一時帰休している

7/1の時点で、一時帰休が解消しているが、4月から6月まではすべて休業した日があった場合は、

4~6月までの休業手当を含まない賃金だけで算定します。

もし賃金だけの日では支払い基礎日数が不足した場合は保険者決定(従前のままの標準報酬月額)となります。

一時帰休が解消していない場合

では、7/1の時点で一時帰休が解消していない場合はどうでしょうか。

その場合は、休業手当も含めた報酬で算定します。

つまりは、休業手当を支払った日も、支払基礎日数に入れるということです。

7/1時点の休業の解消見込みが外れてしまったら

7/1時点での休業する見込みだと思って、休業手当を含んだ報酬で算定したけれども、

その後結果的に休業しなかった場合はどうなるのでしょうか。

日本年金機構の事例集では、以下のとおり説明されています。

休業手当等をもって標準報酬月額の決定又は改定が行われた後、

結果的に一時帰休が解消した場合は、

通常の報酬を受けることになった月から起算して、随時改定に該当するかを判断する。

つまりは、算定のときに7月以降も休業継続と思って算定したけど、結果的に休業しなかったとしたら、休業しなかったところから随時改定しようねということです。

休業があった場合の随時改定・定時改定の整理は以上です。

今回は休業があった場合のケースをまとめましたが、随時改定、定時改定ともに、ほかにも間違えやすいことろがたくさんあります。

なので、必ず年金事務所のガイドブック等は再確認しておきましょう!

日本年金機構の参考ページ

最後に、日本年金機構の参考ページのリンクを貼っておきます。

例年ですと、6月に日本年金機構の算定の説明会が開催されるのですが、今年は新型コロナウイルスの影響で開催されません。

でも、youtubeで説明動画がありますし、このほうが便利だな~と個人的には思っています。(^^)

今年はいろいろイレギュラー対応が多く、労務ワーカーにとっては大変な年ですが、一緒に乗り切りましょう…。

では、また~!

・令和3年度 算定基礎届事務説明動画 ※2021/6/22更新

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/santeisetsumei.html

・算定基礎届の記入・提出ガイドブック(令和3年度) ※2021/6/22更新

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20121017.files/guide.pdf

・標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集 ※2021/6/22更新

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20121017.files/jireisyu.pdf

まとめ

  • 休業手当を支払った場合は、随時改定、定時改定ともに注意が必要
  • 日本年金機構の事例集は知りたいことが書いてある
  • 休業が今も継続している→休業手当を加味して改定する
  • 休業が解消している→休業手当を加味しない
  • ざっくりいうとこんなイメージ
  • 随時改定、定時改定はいろいろ落とし穴があるので、ガイドブック&動画視聴はしておこう
  • 月変(げっぺん)、算定(さんてい)っていうとちょっと労務ワーカーっぽい(^^)
  • 今年はイレギュラーなことが多いけど、一緒に乗り切りましょう…
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